How to survive in the Party+α

ついこの間、留学生の学期末のお別れパーティーが開催された。こっちのパーティーとは、日本の飲み会お茶会とは程遠く、例えるなら、映画『渇き。』に出てくる加奈子のクラブのシーンみたいな、人々が半ば現実から逃れるように飲んで叫んで踊り狂うのが普通に目の前で繰り広げられる凄まじくパワフルでイかれたものだ。どこからどう見ても私らしさの欠片もない催しなので避けていたが、今回縁あって参加することになった。

この世に意味のない経験は存在しない、とは本当のことだったようで、『パーティー』に潜入したことでまた幾つか、この世の謎が明らかになってしまったのでその模様をここに記録しておこうと思う。

 

1.アジア人はアルコールに弱い→〇

欧米の人間、特に北から来ている人たちと、アジア人である私は明らかに体の構造が違った。アルコール摂取の仕方が水。500年の歴史があるメーカーのアルコール42%のウォッカをショットで何杯も飲む。ビールもガンガン並行して飲む。私にも勧めてくる。飲んだ。勧められるがままにビール0.25ℓ、ショット二杯半飲んでからお手洗いで鏡を見たら、ビーチで全く日焼け対策をせずに直射日光浴び続けた後みたいなとてつもない赤さになっていて非常に恥ずかしかった。輪に帰ってきてからの周りの人達の白さにビビった。

その代わりというと変だが、二日酔いという概念はこっちにもある。「二日酔い」、英語では"Hang over"と言う。一見平気そうにしていた友人が数日アルコールにやられていたのも見たので、こっちにもアルコールに弱い人々はいる。多かれ少なかれアルコーンに影響を受ける人は世界各国に存在する。ただその場で顔に出ない人が多いだけのようだ。

 

2.私はアルコールに弱い→△

日本で友人間で飲んでいた時は自分のことを『飲めない人間』だと思っていた。どんな種類のお酒でも三杯程で心臓が爆破するんじゃないかと思うぐらいに動悸が激しくなる。顔が真っ赤になる。ほろ酔いのフェーズを通り越して具合が悪くなってくるのはざらで、ほろよい状態を楽しめる友人を羨ましいと思っていたし、胃と眼球がぶよぶよと歪み始めるのも辛かった。

そんな私が今回はというと、一時は顔が赤くなった。しかし、私は思ったより酒に弱いわけではないのでは?というかアルコーンにある程度慣れてきたのか?という今までとの違いが見えてきた。というのは、上記の飲み会が実は”0次会”にすぎず、完全な空腹状態でその後の真のパーティーで瓶ビールを二杯飲んでも”生きていた”し、ちゃんと無事に帰って無事に寝て、二日酔いも起こさずに朝自然と起きられたためである。

 

3.パーティーで一番痛いことはへたくそなダンス→×

ここをちょっと勘違いしていたのだが、基本的にパーティー空間ではなにをやってもイェー!!!!みたいに歓迎される。正直明度の低さとアルコールによる全体的な正気度の低下により、多少下手なダンスでも本人が楽しんでいれば変に見えない。お世話になってるスロバキア美人の姉御も、普段ははつらつとしているかつ品よく何でもそつなくこなす系お姉さんだが、パーティーでは狂ったような民族舞踊みたいな足取り、ダンスで周りをガンガン巻き込んで空間を楽しんでいて、そのキャラの変わりようは圧巻でしかなかった。

しかしながら、パーティーで死ぬほど浮いてしまう行動が一つだけある。

壁際で所在なさげに目を泳がせ、「私は慣れていません、ごめんなさい。」的オーラを出すこと。

これは地獄。他から見ても辛いし、何よりも自分が辛い。そしてここが私にとっては、大きな課題だった。

 

4.パーティーでは皆プロみたいにテクニカルダンスを披露する→△

地獄から抜け出すために、まず私は周囲に目を走らせた。前述したように、皆が皆ダンスが上手いというわけではない。しかし欧米・中東の血なのか、何をしていてもなんだかキマっているように見える。私は動揺していたが、皆思い思いの動きをしている中で確かに存在する、これを気を付ければどうにかなる、という物理ポイントを発見した。

それがこちら。

 

①足を肩幅かそれより半歩分大きく開く

②膝を緩ませる

→足が固いと棒立ちに見えるしリズムを受け取りにくくなる

③髪がなびくように頭を振る。

→正気なのがバレてはいけない。一番柔らかくするのを忘れるのが頭である。髪の毛が揺れているとそれだけでノリの良さに加えて女らしさが出るので得。男性は肩と首の付近、筋を柔らかく使うと良さそう。

④肘と手をできるだけ上の方に位置させる。最低でも脇を締めないこと。

→浮かないように、と体を縮めていると精神的にいつまでも冷静なままで、地獄から抜け出せない。姿勢的に開放的になると抵抗がなくなり、結果的に楽になる。

⑤会場の大音量の音楽が体内に響いて心地よく感じるレベルまで友人と飲む。

→アルコール×体内にまで響いてくる大音量の音楽で一種のトランス状態になるため、ビートで体が勝手に動きやすくなる。

 

要は、飲んで理性を飛ばしてビートを受け入れるか、飲まずに一時間地獄耐久レースをするかの醜い戦いに過ぎないのである。しかしそんな中でも空間を楽しめることがある、というのが実際経験してみて一番の発見だった。

 

5.酔っぱらうと突然絡み始める奴らが出てくる→◎

盛り上がってくると男女が突然おっぱじめようとするので厄介である。

「おい待て、そんなディープなキスをするんじゃないよ!!👏」

「そこのカップル、首にむしゃぶりつくんじゃないよ!!👏」

と心中つっこみながらパーティーを抜け、連れの元に帰るとその頬にこっちが恥ずかしくなるぐらいにでかでかと真っピンクのキスマークがあって正直かなり引いた。こっちは日本より性にオープンで、それが意外と良い風に作用することもあるし、このようにギョッとさせられることもあるのだ。

更に、アルコールは生真面目な皮を剥がすのにも役立つらしい。堅物な自分でも酔っぱらってみると体に入ってくる音楽に合わせて手足が自然と動き始めるもんで、「人間は生物学的に元々音楽に合わせて踊るのが好きなのかもしれない」とぼんやり思った。

 

6.口付けには深い意味がある。→△

これもまたCultural Difference的話。帰りがけ、せっかく出不精な私を連れ出してくれたので連れに一声かけてから帰ろうとした。挨拶として男女間でもハグキス文化があるこの国なので、頬のキスはまあ理解できたが、そいつが口にも軽くしてきたのでこちらとしてはびっくり仰天。酔いもさめて一人夜道を歩きながら友人に「キスされたんだが!?」と電話口に叫んだので深夜二時の海外の夜道に恐怖心を抱く心の余裕など一切なかった。更に翌日、エフィーに「これ普通なんだよね?」と恐る恐る訊くと怪訝な顔と共に「少なくともオーストリアでは異常やで」と返された上に当の本人は二日酔いで一日中寝込んでいたため、その日一日一人で「キスは愛情表現?挨拶?なんだ?」と考えこみ、単語テスト対策そっちのけで集中力散漫であった。恋愛慣れしていない女の典型例である。

そして翌々日。朝すっかり二日酔いから回復した様子のそいつをキッチンで見かけたので、率直に「この前のアレはそっちの国では普通なのか?」と問いただしたところ、へら~っと笑って「普通だよ!…あ、不愉快だったらごめんね!」と素直に謝られたので”No problem!”と張り付けた笑顔で返した。単語テストは多分大丈夫だった。

バカな話だがWikipediaで調べたところ、一部の国、例えばロシア人など東スラブ系の人々や、フィンランド人など北方のフィン・ウゴル系の人々の間では口づけが普通な場合があるらしい。ちなみにそいつはチェコ人だった。

 その後、様々な国の人々に「そっちの国では口づけも挨拶として普通なのか」と聞きまわったが、今のところ「普通」とシンプルに返されたことはない。同じヨーロッパでも細かに文化の違いがあるというのは単純に面白いと思った。

 

最後に、

パーティーに参加するのは良い経験だった。でももう行かないと思う!

 

~Special Thanks~

衣装、鞄貸し出し者:エフィー